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グループ法人税制③ グループ法人間の資産の譲渡損益の繰延 Ⅱ


※ 前回の グループ法人間の資産の譲渡損益の繰延 Ⅰ の続きです。

この制度は『課税の繰り延べ』と言われているので、税金が繰り延べられる(税金が減る)制度と思いがちですが、
逆に税金が増える場合もあるので誤解しないようにお気を付け下さい。
ちなみに『繰り延べ』とは将来に持ち越すことですので、必ず将来に清算されることになります。

【具体例】
① 帳簿価額1,000万円の資産を900万円で売却した
② 帳簿価額900万円の資産を1,000万円で売却した
※ 取引の相手先は100%グループ会社、税率40%と仮定

<会計上利益>
① 1,000万円-900万円=△100万円 ※ 譲渡損
② 900万円-1,000万円=100万円 ※ 譲渡益
③ ①+②=0

<課税所得>
①  0 ※ 損益を計上しない
② 100万円 ※ 帳簿価額が900万円なので調整なし
③ ①+②=100万円

<納税額>
100万円 × 40% =40万円

このように、利益が0円なのに税金が発生することもあります。
資産を売って1,900万円の資金はありますので納税はできますけど...。


この時に税務上損失にならなかった100万円は、
取引の相手先が別の相手に譲渡したりした時点で売った側の損失になります。

逆のパターンだと利益が繰り延べられ、相手先が譲渡等をした時点で所得が増えて税金がかかります。
この場合には、資金が無いのに税金がかかる場合もありますので、前者よりも注意が必要です。


この規定により、利益が出ている時に資産をグループ会社に売却し所得を圧縮する
いわゆる『損出し』が出来なくなりましたが、逆にグループ会社間での資産移転がやりやすくなりました。

以下、適用対象となった場合の主なメリット・デメリットを挙げておきます。

<メリット>
・ 資産の譲渡益の課税が将来に繰り延べられる
・ グループ間での資産の移転には移転時点で税金コストがかからなくなる
・ 売却先によって税制が変わるので経営判断の選択肢が増える

<デメリット>
・ いわゆる『損出し』ができなくなる
・ 譲渡益を繰り延べた場合は、将来の納税資金を考慮に入れる必要がある
・ 作成する書類が数点あり、手間が増える


対象の取引には強制適用されるものの、有利か不利かはケース・バイ・ケースですので、
対象となる会社には事前のタックスプランニングを行うようにしてください。


※ 上記は、記事作成日現在の法令に基づいた取扱いになります。


2010年11月 3日

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